「 私は、英語で世界を目指さない」

土佐平六(研究員)

土佐平六

 私は、英語で世界を目指さない。

 理系と文系の確執は深い。理系が“文系知識でスマートフォンが作れるか”といえば、文系は“専門バカが何をいう”と応酬する。かくしてこの諍いは、未来永劫続いていくのであろう。さて、理系がかくも文系を敵視する理由の一つに、“理系のジレンマ”がある。英語が嫌いで理系を選択したのに、結局英語を学ばなくてはならなくなる、というものだ。  私は大学で卒業論文を書くにあたり、大量の論文を読み込まねばならなかった。もちろん英語である。毎週の論文輪読会も重荷であった。当然英語である。現在は研究所に勤めているが、使用する試薬は軒並み海外製である。使用書は英語である。
 結局、どこに行こうとも、何者になろうとも、英語はついて回る。ならば、今すぐに勉強を始めるべきだ。これが、私がQQEnglishで学び始めた理由だ。

 閑話休題、クールジャパンが国家戦略になって久しい。日本のオタク文化は豪華絢爛咲き誇り、今まさに世界を席巻しつつある。世界のオタク人口は増加の一途をたどり、美少女イラスト付き米袋は飛ぶように売れ、ある政治家は読んでいた漫画にちなみ“ローゼン閣下”と渾名されるに至った。漫画が教科書に載る日も近い、と思っていたら、どうやらすでに国語と美術の教科書に掲載されているらしい。この国はいったいどこへ行こうとしているのか。  かくいう私もオタクである。オタクの分野というのは異常に細分化されるのだが、私はボードゲームオタクである
 この分野は、日本が支配的であるオタク文化において、例外的に海外をメッカとする。ボードゲームはドイツが本場。かの国では、ボードゲームの新作コンテストが毎年開催されている。近年、本邦でもそれらが盛んに発売されるようになったが、いかんせんプレイヤー人口は少ない。故に、我々ボードゲームフリークは、夜な夜な対戦相手を探してボードゲームカフェなるものに集うのである。私がよく行くゲームカフェは京都大学と同志社大学の間にあり、留学生の客が大変に多い。必定、対戦相手も様々な国の学生となる。アメリカ、フランス、スペイン、オーストリア、中国、韓国、ベトナム…。様々な人々と知り合った。彼らとは有意義な時間を過ごさせてもらっている。さて、彼らとコミュニーケーションを取りたいとすれば、何語を使うべきだろうか。結局、趣味に走ったところで英語がついて回っている。  なお、こういった場で学ぶ英語というのは、上品な英語に比べて格段に吸収速度が早い。楽しんでいるが故であろうか。特にブルージョーク、いわゆるシモネタのレパートリーにはかなりの量になってきた。男性諸兄におかれては、  ぜひいくつか学んでおくことをおすすめする。海外の男性(及び一部の奇特な女性)と仲良くなる一番の近道である。かのイチローも、オールスターゲーム前のブルージョーク・スピーチを習慣としているとか。

 英語を習得したところで、全世界を楽しめるわけではない。空港から少し田舎に行けば、現地語しか通用しない地域ばかりである。ペルーでは、車の運転手に”急いでくれ”が伝えられず、飛行機に乗り遅れるところだった。にこやかなおにいちゃん達にボートに乗せてもらったと思ったら土産物を売りつけられ、いくら断っても逃げられなかったことがある。後者に関しては、英語がわからないふりをして売りつけようとしていた可能性もあるのだが。  悔しくて、帰国後スペイン語の勉強を始めた。QQEと同じく、Skypeでグアテマラの講師の指導を受けている。授業の解説に使われる言葉は英語である。結局、英語は様々な学びのためにも必要な言葉なのだ。

 私は、世界を目指すために英語を学んでいるのではない。英語がわからなくても、翻訳を外注すれば仕事はこなせる。金髪の美女とは是非ともお近づきになりたいと思うが、同じぐらい大和撫子が好きだ。日本という国が大好きで、将来海外に移住しようなどとは夢にも思わない。  でも、英語が分かれば、日本にいてさえ人生が楽しくなる。仕様書を翻訳を待たず読むことができれば、昼寝をする時間も生まれるだろう。英語の応酬ができるなら、もっとたくさんのプレイヤーに出会えるだろう。多くのことを学ぶきっかけにもなり、手段にもなるだろう。  英語が扉となり、あらゆるものが私のすぐそばまで来ているのだ。

 だから、私は英語で世界を目指さない。きっと、世界の方から私のところにやってくるからだ。

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