「人生を懸けてしたいこと」

高橋 花音(高校生)

高橋 花音

 「子ども達がお腹一杯にご飯が食べられるように・・・」
 私が世界を目指す理由はこの一つの信念である。
 今、世界では飢餓と飽食の問題が並行して大きくなりつつある。日本にいると想像できない世界であるが実に5秒間に1人、飢餓が原因で死んでいる。一方、日本は年間5800万トンの食糧を輸入しながら、途上国の5000万人分に匹敵する食料を捨てている。一週間毎にコンビニでは新商品が入荷され、大手コンビニチェーン店で約36万食もの弁当が捨てられている。金額にするとほぼ1億8000万円分が、 毎日ひたすら廃棄されている計算になる。このように少しのデータを見ただけでも悲しくなる現実社会なのだが、これを悲しみ放っておく暇はない。何としてでもこの食糧・飢餓問題解決に足を踏み入れなければならない。その解決策の一つとして、私は「青年海外協力隊に入り、農業指導をする」という夢を持つ。

 私の日常生活に将来の兆しが見え始めたのは、小学4年生の時だった。「まずしい」と「まぶしい」の見分けがつかなかった私は、衝撃的な映像を見る。泥水を幸せそうに飲む少女、銃を持つ少年、地雷が潜んでいるかもしれないグラウンドを駆け回る子ども達。この番組により「貧しい」という言葉が脳の引き出しにしっかりと収められた。それから、物に溢れている現代日本社会を見直すかのように途上国の現状をリポートする番組が増えていったように思う。その時代の流れにより私も途上国の現状、そこで働く日本人の姿を目に焼き付けていった。途上国の生活状況は、日本で不自由なく暮らせている私にとって非常に過酷で、とても笑顔では居られない場所という印象だった。しかし、現地にいる人は違っていた。泥水や雨水を飲んだり、道が整えられたり、学校に通えるようになったりすること(私にとってそれらが整えられているのはあたりまえのこと)で笑顔になっていた。私にとって“あたりまえ”の生活が彼らにとって“有難い”(貴重な)生活なのだと彼らの笑顔から教えられたようだった。そのことに気づけた頃から私の想いは少しずつ彼らへと動き始めていった。
 2013年夏、タリバンに襲われている少女が自分の身の危険をさらしながら世界へと教育の必要性を訴えた。その少女はノーベル平和賞を受賞し、彼女の誕生日でもある7月12日を「マララデー」と名づけられた。国連での彼女のスピーチは、当時16歳とは思えない堂々かつ力強いものだった。そして今月10日に開かれた平和賞受賞演説の中にも、私の心を動かすものがあった。 「親愛なる姉妹、兄弟の皆さん。空っぽの教室、失われた子供時代、無駄にされた可能性を目にすることを「最後」にすることに決めた、最初の世代になりましょう。」
この言葉に共感し熱くなる想いと人のために何も出来ないでいる私の背中を押してくれるような気持ちにもなった。私の中にある「何かを変えたい」という”何か”を確実なものにしていかなければならないという気持ちにさせられた。

 私が変えたい”何か”は、何だろうか。それは農業の在り方、日本の政治、飢餓問題など。たくさんの解決されるべき問題が出てきてしまった。この中で私が出来ることを絞らなければならない。多くの問題の根本を変えることは出来ないだろうかと考えた。  それに対しての私の答えが「農業学校設立」だ。開発途上国に農業学校を設立させる。これが私の人生最大の夢であり、問題解決策の手段である。学校名は、現地の言葉で”平和の庭”。世界に平和を想う輪が広がるように。飢餓防止のためにも給食制度を入れよう。農業学校の中にカフェかレストランを作って、生徒の家庭環境(事情)に捉われず通えるよう、働けるようにもしておこう。これからを生きる10代の子ども達に農業を教えることで持続可能な農業システムが根を張って、自分たちの力で飢餓問題を克服出来るようになるのではないだろうか。私の夢ノートには未来の子ども達の笑顔が広がっている。私が心の中に秘めていた”何か”は、これだったのだと確信した。

 現代っ子の私が影響を大いに受けたのは、テレビを通して知った東南アジアやアフリカの現状。そして、一つ年上のマララさんという女性だった。なぜ過酷で自分に関係ないと放っておいても良さそうな所を目指すのか。と責められる時がある。しかし、テレビの向こう側にいる子供たちのSOSを受け取らない訳にはいかない。必死で生きる子ども達の笑顔に惹かれた。私が生かされるべき所は便利になった日本社会でなく、まだ満足のいく生活が出来ていない地であるのだと考えている。
 「子ども達がお腹一杯にご飯が食べられるように・・・」私の人生を掛ける目標はここにある。その一つの方法として、私は「青年海外協力隊に入り、農業指導をする」ということから始めたい。

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