「私が世界を目指すわけ」

sho-ta(学生)

sho-ta

なぜ世界を目指すのか。
その命題に答えるためには、私という人間をがらりと変えたある出来事について知っていただかなければなりません。
 2012年9月、それは大学3年生の秋のことでした。私は授業もほどほどに、アルバイトに明け暮れる日々を送っていました。そんなある日、大学構内をぶらぶら歩いていると、掲示板の片隅に貼ってある1枚のビラが目に留まりました。「カナダ短期留学 参加者募集中」。そこまで強い思いはありませんでしたが、在学中に留学してみたいとなんとなく考えていた私は思い切ってそれに応募してみることにしました。幸いにも応募者は少なくトントン拍子で参加が決まり、説明会も終え、カナダへと飛び立ちました。実はそれが初の海外渡航でしたが、大学教員が引率ということもあり、不安はあまり無く、まあ大丈夫だろう、と楽観的に考えていた私はそれに対して大した準備もせず、カナダという異国の地に降り立ったのでした。
 初めて現実にみた日本以外の景色、空気、匂い、そのどれもが新鮮で私を刺激しました。それまでテレビの中くらいにしか、ほとんど見かけたことのなかった“外国人”である人達が普通に会話を楽しんでいるのです、しかも英語で!その一点のみをとっても十分に興奮しうるモノでした。この時の私は、私の考えをがらりと変えてしまう衝撃的な出来事が、すぐそばに身を潜めていることなど夢にも思いませんでした。それは税関で起こったのです。
 長い列に並び、いよいよ自分の番、こちらを睨みつけながら質問を投げかけてくる税関職員、私は彼の質問に何一つ答えられなかったのです。この旅の目的は?お金いくら持っている?どれくらいの期間滞在する???頭が真っ白になりました。今でこそ簡単だと思える質問ですが、この時の私は何も理解できず、推測すらできなかったのです。理解できない言葉でひたすら質問を投げかけてくる異質な存在を前にし、私は立ち尽くすより他に何もできませんでした。そうこうしている間に別の職員が来て、私を別室へ連れて行き、再び質問攻め、持っていた手荷物は中身を全て床にぶちまけられ、やっと聞き取ることができた彼女の言葉は「Why you come here?」どうして英語も分からないのにここへ来た?一体お前は何をしにここへ来たのだ?英語も分からないくせに??。まるでそう言うかのように侮蔑の表情を浮かべた彼女の言葉は分からずとも、侮辱されていることだけははっきりと分かりました。今までの人生を振り返ってみても、これほどまでに自分の無力さを感じた事があったでしょうか。その瞬間私の中で何かが音を立てて崩れていくのが分かりました。しかし不思議なことに、目の前で散々に私を侮辱していた彼女??モンスターとでも形容すべき異質な存在??はその瞬間人間となりました。そして私の世界はその様相を変え、動き出したのです。
 私が世界を目指す理由、それはまだ見ぬモノを見るためです。もしあの時の体験がなければ、きっと私は日本が世界の一部であるということすら、本当の意味で気づくことができなかったでしょう。そして、私の中で“英語”というモノは“娯楽品”から“必需品”へと変わりました。日本という枠組みの中では、英語が分からず困るのはきっと授業中くらいでしょう。私は、英語ができればすごいという認識から、英語はコミュニケーションのツールであると再認識した瞬間、猛烈な危機感に襲われました。“英語ができなければ生きていけない”オーバーな表現かもしれませんが確かにそう感じた私は、その時から今に至るまで常に英語を意識した生活を続けています。英語ができないということは、人と関われるチャンスを潰していることと同義だとも思うのです。日本の人口はおよそ1億人、世界の人口はおよそ72億人です。日本に住む人以外、皆英語でコミュニケーションがとれると仮定した場合、もし私が日本語しか分からなかったとしたら、私が本当に大切な友達を作れる確率も、愛してやまない人に出会える確率も、きっと1/72しかないでしょう。そんな風に考えると、なんだか71/72人生を損しているような気がしてならないのです。税関で私を侮辱した彼女が初めて人間に見えた時、私はきっと彼女と同じ目線に立てたのだと思います。私は無意識の内に日本人と外国人の間に壁を作っていたのかもしれません。私と彼らは相容れないと勝手に思い込んでいたのかもしれません。しかし、その壁は彼女が見事に壊してくれました。そして彼女の言葉が私に、私は日本ではなく世界の住人であることを気づかせてくれたのです。その時動き出した世界、しかしそれはほんの一端にすぎないのだとしたら、私はその先にどんな光景が広がっているのか、たまらなく知りたくなりました。そして私は今後も世界を目指し続けます。まだ見ぬモノを見るために。

QQ English facebook 詳細・応募フォームはこちら