「マイストーリーを世界へ」

cherry(パート)

cherry

私は女性のマイストーリー、自分史を世界へ広めたい。
50歳以上の人なら国籍、人種を問わず、寄せてもらった原稿を編集、翻訳し、ネットに日本語と英語で公開する。本名でもよし、匿名でもいい、その人にしかない唯一無二の人生経験を日本、そして世界の人に読んでもらい、豊かな知恵に学んでいきたい。
なぜこう思うようになったかは、3年前、祖母が100歳で亡くなったときにさかのぼる。

1、祖母の死
母方の祖母は石川県にいて、子供の頃は毎年夏に母と里帰りをしていた。とにかく働き者で、子供や孫が集まったときはおいしい食事をふるまってくれ、私たち孫一人ひとりに毛糸のマフラーを編んで送ってくれたり、リクエストした甘エビをたくさん届けてくれたりした。
しっかり者で元気な祖母は、自分のことはあまり語らず、いつも周りのことばかり気づかう人だった。北海道から単身やってきたらしいということは聞いていたが、それ以上のことは知らなかったし、まだ若かった私には昔の話などそもそも興味がなかった。
思春期になるとだんだん帰省もしなくなって疎遠になったのだが、大人になってからは、仕事で忙しい母に代わって私の初めての出産に付き添ってくれた。実家に帰った私に、お乳が出るようにと鯉の味噌汁をつくり、赤ちゃんのお風呂の入れ方を教えてくれた。
そんな祖母もやがて弱ってボケてきたこともあって、母が引き取って介護をするようになった。最後のほうは自分の娘である母のこともわからなくなったが、母は祖母と離れていた分を取り戻しているかのように一生懸命お世話をしていた。
その祖母が100歳でなくなったのが3年前のこと。お葬式に行けなかった私は、2ヶ月後のしのぶ会に参加した。親戚が50名ぐらい集まって、口々に楽しかった思い出を語る。祖母の若き日の姿がいきいきと蘇り、母は「もっとお母ちゃんにいろいろ聞いておけばよかった。」としきりに言う。いつも人のお世話ばかりしていた祖母、それが当たり前と思っていた私は、祖母のことを何も知らないままだった。あんなにお世話になったのに、もっといろんなことを教えてもらっておけばよかった。祖母はどんな気持ちで人生を送ってきたんだろう……。

2、父母の書簡集
それから母は、老前整理とでもいうのか、いろんな書類や写真を整理し始めた。元気な今のうちに、自分はきちんと残したいと思ったのだろう。やがて荷物の中から出てきたのが、両親が結婚する前に交換していた手紙だった。実に50年以上前のものを大事にしまっておいたのだが、100通近くの手紙をどうしようかと途方にくれている。
父は当時アメリカ駐在の商社マンで、母と直接会うこともなく文通だけで結婚したということで、その黄ばんだエアメールが今ではなんともレアなこと。私はふと思いついて、書簡をパソコンで文字起こしすることにした。若き日の両親の姿がわかる絶好の機会だと思ったのだ。老眼で小さい字の読みにくい母は、喜んでお願いするということだった。
順番に読みながら活字を打っていく。結婚が決まる前の若き父と母の日常の生活ぶりから、葛藤、恋心、疑心暗鬼、さまざまな思いを追って活字にする作業は、まるでタイムスリップしたような、それはそれは不思議な感覚だった。もし2人が結ばれなければ私は存在しなかったのだから、映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」の世界のようだった。
2人の絆以上に驚いたのは、50年以上前のアメリカに単身母を送り出した祖母の勇気だった。年頃の娘を持つ私からしたら、もし自分なら、会ったことのない人と結婚するために行ったことのない外国に娘を出すなど、とても無理だろうと思ったからだ。一通一通書き起こしながら、大胆かつ深き祖母の生き様がそこに横たわっているのを感じた。

3、未来を照らす光
書簡集に続き、その後年表もつくり、両親の年史として残すことにした。それらを読むときに心が強く動くのは、やっぱり私が歳を重ねて中年になり、未来よりも過去のほうが親しく好ましいものになってきたからだろう。あんなに圧倒的な存在だった両親の老化に寂しくなったりもした。でも、自分につながる歴史に向き合う時間は宝物になった。
この経験を通じて思ったことがある。世の中の女性、特に中高年以上の人は何も書き残さないと思う。でも、それぞれに唯一の人生を生きてきて伝えられるものがある。そのお手伝い、というより、むしろ学びとしたい気持ちが強くなった。
先の見えない未来が不安で、この歳になっても娘たちに何をどう伝えたらいいのかわからない私は、先達の人生はきっと何筋もの光となって行先を照らしてくれる、それは日本だけじゃなくて、世界に発信できる誇りになるものだと確信する。
50歳以上の女性なら誰でもOK、世界に誇れるマイストーリーを綴りませんか?

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